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【Archive】こなたよりかなたまで[iOS版]

 『こなたよりかなたまで』は、2003年にF&Cから発売された18禁ノベルゲームです。
 今回私がプレイしたのはiOS版…つまりHシーンを削除した全年齢版になります。
 昔エロゲーにドハマりしていた頃からずっと気になっていた作品だったのですが、当時は中古でもプレミアがつく価格で手が出せなかったんですよね。最近になってF&CのゲームがiPhoneで遊べることを知って、ラインナップの中にこれが入ってたのを見つけて即購入しちゃいました。スマホでノベルゲーやるのは初めてでしたが、寝っ転がりながら出来るのは素晴らしいですね(ぇ

 この『こなたよりかなたまで』(以下『こなかな』)、いわゆるシナリオゲー、もとい泣きゲーとしての評価が高い一作なのですが、主人公・遥彼方の在り方については賛否両論真っ二つでした。単なるプレイヤーの分身の枠に収まらず我を強く出すタイプの主人公にはありがちな話ではありますが、それにしても彼方君については極端な評価がされているなぁと思っていました。
 正直な話、『こなかな』では自分が彼方君を好きになれるかどうか、という点に最も興味があったことは事実です。

 結論から言えば…私は最後まで彼方君を受け入れることが出来ませんでした。
 以下、ネタバレを含む感想。相当にネガティブな内容になってます、注意。
 とにかく彼方君が周りを傷つけないように、と考えてやってる行動がことごとく裏目に出てるのが酷い。
 特に佐倉に対する仕打ちが最低。佐倉にあたかもクリスと恋人同士であるようにわざと誤解させて泣かせて、その翌日からも平然とクリスと一緒に登校してのほほんとラブコメやってる神経が全く理解できませんでした。同じ教室、席も近い佐倉がそれを見ていないはずもなく、彼女の気持ちを考えると居た堪れなくて辛かったです。私だったら、もう二度と佐倉の前に姿を見せないようにしますけど…そこまで徹底して孤独な道を選べないんですよね、彼は。
 結局、彼方君が彼方君であるためにやっていたと自負していた行動の数々が、周囲の協力なしには実現できてないことを彼はあまり意識出来てないんです。これは周囲の登場人物が全員彼方君のことを大好きだから成り立っているお話です。
 クリストゥルーで明かされる真実を知った後に見るノーマルENDは、まさに悪夢。あの結末はクリスがあまりにも不憫です。…あれ、まさかそういう意味での「泣きゲー」だったんですか?(愕然)

 何より佐倉とクリスが同時に救われるルートがないのが悲しい。クリストゥルーがそうなのかなと思っていたら、このEDだと佐倉についてのフォローは一切ないんですよね…(結婚式に出席してる?っぽいんですが正直ありえない描写だと思いました)。いずみちゃんや優、九重さんは彼方君と関わらずとも今後救われる可能性はまだ残されていると思いますが、佐倉とクリスについては無理です。彼女らにとって、それだけ彼方君の存在が大きいから。彼方君が彼女らを選ばない限り、彼女らに本当の幸せは訪れないのです。
 そもそも私が彼方君を嫌悪してしまうのは、それだけこのゲームに登場するヒロインが魅力的だからです。そんな彼女らを無自覚に傷つけ、蔑ろにする主人公を好きになれという方が理不尽でしょう。ヒロインの好意に鈍感な主人公、それをこんなにも罪深く感じたのは、初めてでした。…何というか、こんな重苦しい話にするより、ごく普通のギャルゲーにしてもらった方が、よほど純粋に楽しめたような気します。

 「いつか必ず訪れる死を前に、残された時間をどう生きるか」というテーマ性は良かったと思います。彼方君の行動が参考になるかどうかはプレイヤー次第ですが、少なくとも自分ならどうするだろうと考えるきっかけにはなるでしょうし、そこに価値を見出すなら『こなかな』は間違いなく良作でしょう。
 F&Cって地力が高いので、まともなシナリオさえ用意できれば簡単に名作を生み出せちゃうはずなんです。なのに『こなかな』はテーマ性を盛り込んだ意識の高いシナリオが逆に足を引っ張ってしまったという皮肉。痛し痒しですね…

 最後に、『こなかな』を全年齢版でプレイしたことは失敗でした。
 たとえ無粋だろうが無理があろうが、ヒロインの性的なシーンが欲しかった…見たかったです。女の子はみんな可愛くて素敵な子ばかりだっただけに、残念な結果となってしまいました。

プロフィール

明日から本気出す
HN:ぷにょにょん(仮)
レトロゲームをネタに妄想を滾らせることを生き甲斐にする拗らせオタク。二度とは戻らぬあの頃に思いを馳せては感傷に耽っている

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