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コミック版大貝獣物語&ギャグギャグ大貝獣物語Ⅱ 追想

 先日、漫画家の御童カズヒコ先生が闘病の末に亡くなられた事を知りました。90年代のコミックボンボンで活躍していた作家さんで、私の大好きなゲームの一つである『大貝獣物語』をコミカライズした方でもあります。
 何年か前にご本人のXアカウントを覗いた時にはファンの方達と楽しそうに交流していた様子が強く印象に残っています。まさか癌に冒されていたとは夢にも思わず…謹んで、ご冥福をお祈りいたします。

 若い頃に親しんだ作品に関わった方達が次々にこの世を去っていくのを見送る歯痒さ、何度味わっても慣れることはありません。ただただ悲しいし、寂しい。残された私に出来るのは、彼らの功績について自分なりの言葉で後世に伝える以外ないのかもしれません。たとえ今聞いてくれる人がいないとしても、いつか誰かに届くことを信じて。

 『大貝獣物語』のコミカライズについて、前blogに結構な熱量で書き殴った感想記事があったのですが、とある事情で非公開に切り替え、その後は表立った場所で話題に出すことすら控えていました。
 しかし、御童先生の描いた『大貝獣物語』を大いに楽しませてもらった人間として、このまま口を閉ざして「なかったこと」にしてしまうのは嫌だな…と思いました。
 原作の『大貝獣物語』を心底愛する人にとっては、彼の手掛けたコミカライズは到底許せない存在かもしれません。それはそれでいいと思います。ただ、私にとっては確かに必要な作品だったのです。その事を”個人的な”思い出語りとして、以下に書き残しておきます。読みたくない方はスルーで、どうぞ。
 『大貝獣物語』は私にとって初めてプレイ&クリアしたRPGで、当時の自分といえばそれはもう滅茶苦茶にのめり込んで、四六時中『大貝獣物語』の事を考えていました。いわゆるカップリング萌え(火の貝の勇者×キララ王女)に目覚めたのも『大貝獣物語』がキッカケだったと思いますし、もし自分が『大貝獣物語』の世界に入り込めたら…みたいなイタい妄想も何度やったかわかりません。自分のオタク人生の原点を語る上では欠かせない作品の一つなのです。
 しかし同志を探そうにも身近に『大貝獣物語』を知る人はほぼいなく、インターネット上の数少ない同人サイトを舐めるように巡回する日々を送っていたところに、ようやく公式コミックの存在を知るのです。「何それ、絶対読みたい!!!」と思った私は近所の中古本屋を探し回るも、どうしても見つけることが出来ませんでした。
 その後私は様々な作品に触れ、夢中になり、いつしか『大貝獣物語』のことはすっかり忘れてしまいました。

 それから十数年後。『黄金の太陽』をきっかけにぶり返したレトロゲーム愛好のマイブーム真っ只中にいた私は、不意に『大貝獣物語』の事を思い出し、何とはなしに駿河屋の検索窓にその単語を入力したのです。
 すると…あるじゃないですか。あの日あの時、狂おしいほどに求めていた『大貝獣物語』の公式コミックが。
 当然、光の速さでカートにぶち込みました(笑)。後日届いた現物を手にした時の感動を、私は忘れる事はないでしょう。

 原作ゲームではデフォルトネームも一言の台詞もなく、どんなキャラクターなのか一切の謎に包まれていた主人公こと火の貝の勇者くん。公式コミックで「カズマ」と名付けられた彼は、どこまでも純粋でまっすぐな少年として描かれていて、自分のイメージしていた通りの存在として漫画の中で躍動していました。自分の脳内でフワフワとしていた主人公の人格が、「カズマ」のお陰で明確に縁どられたことは確かです。
 涙あり、笑いあり、熱血ありの王道少年漫画として昇華された『大貝獣物語』は、原作ゲームとはまた違った味わいを私に与えてくれました。ゲーム序盤の山場までしかコミカライズされなかったことが悔やまれるほど、それは良い出来だったのです。

 後に同作者による『ギャグギャグ大貝獣物語Ⅱ』も探して購入し読むことになりました。
 Ⅱは未プレイだったこともあり手を出しあぐねていたのですが、内容自体は2発売前に宣伝目的で描かれていたもののようで、ゲーム本編そのものには深く触れていなかったので問題なく楽しめました。先のコミカライズでは出番のなかった最推しヒロインのキララ王女が『ギャグギャグ大貝獣物語Ⅱ』では出演してくれていたのが嬉しかったです。
 タイトルにギャグを2回重ねてるだけあり、ある程度原作を尊重して作られていただろう前作とは打って変わって、良くも悪くもはっちゃけまくってるのが特徴。単行本のカバー袖に「おなかの皮がよじれても知らんぞ。パンクしたって、ほんと~~~~に知らんぞ!」というコメントが載っているのですが、まさか本気で声出して笑うハメになるとは思いませんでした(苦笑)。
 前作主人公の扱いは確かに酷い、酷過ぎるのですが、ショックを受けるより前に笑ってしまった時点で私の負けです。ここまで突き抜けてギャグに徹してくれたならもう何も言う事はありません。
 自分が今作を許容できるのは、前作の本編コミカライズを真面目にこなしてくれた信頼があったからこそです。当時の小学生向けのギャグ漫画ならこれぐらいドギツイネタがあっても仕方ないかな~ぐらい。

 この後、私は原作ゲームを再びプレイする事になります。当時は拾いきれなかった小ネタや仲間キャラの個別イベント・エンディング等全て見るまでに遊び尽くしました。その結果、自分の余計な妄想・二次創作欲が湧かなくなるほどに『大貝獣物語』というゲームに”満足”出来たんですよね。
 自分の見たいもの、欲しいものは全て原作の中にあった、つまりそういうことなんです。
 そこに行き着くまでに、随分と長い時間が掛かってしまいました。

 私が『大貝獣物語』という作品を味わい尽くす過程の中に、御童カズヒコ先生の手掛けたコミカライズはなくてはならないものでした。その事だけは、事実としてここに書き留めておこうと思います。ありがとうございました。

プロフィール

明日から本気出す
HN:ぷにょにょん(仮)
レトロゲームをネタに妄想を滾らせることを生き甲斐にする拗らせオタク。二度とは戻らぬあの頃に思いを馳せては感傷に耽っている

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